「障害をもつ子を産むということ〜19人の体験〜」から

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あゆみの家に配属になって、1年近く経とうとしている。
区の直営から、法人による委託運営となって、職員がほぼ総入れ替えとなり、数ヶ月の引き継ぎを経て、緊張しつつも日々の支援や行事に必死で取り組んできた。
そして、気がつけば、あっという間に今年も終わろうとしている。本当に、あっという間だった。

なぜ、あっという間だったのかといえば、いろいろ大変ではあっても、根っこのところで仕事が楽しかったのだ。
なぜ、楽しかったのか?
と振り返るならば、最も大きな理由として、「笑顔に囲まれていたからなのではないかという気がする。
利用者さんはじめ、お母さん、お父さん方の笑顔に触れられる仕事、作り笑いでない笑顔に、こんなに日々触れられて、皆で笑い合える職場が他にどれだけあるだろうか?

その環境に感謝すると同時に、どうして、こんなにステキな「笑顔」がたくさんあるのだろう? とも思う。
特に親御さんとは、来所時の立ち話で屈託ない冗談で盛り上がったり、またある時は、「あのぉ、ここんとこはもうちょっとこうなりませんかね~…
などと、お願いしてしまったりすることが、あまりにも「当たり前」になっている。けれど、もしかしたら私達は、普段の親御さん達の笑顔に安心しすぎて、その笑顔に甘えてしまっているのではないか?
利用者さんはもちろん、ここに来るまでの「家族のことを、私達は一体どれだけ知っているのだろうか? と、知らぬ間に積み上げて来た己の脳天気さに思い至り、ヒヤリとしたり、もどかしく思うことがある。

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『障害をもつ子を産むということ』という本に出会ったときの衝撃は、だから相当なものだった。
この本の編者の一人である野辺明子さんは、ご自身も長女の障害をきっかけに「父母の会」の活動を始めた人であり、親と子が最初に出会う「新生児医療現場」での医師や看護師らに向けて、「障害をもつ子どもの親の気持ちを理解し、心あるケアとは何かを考える本」を提供したい、という切実な思いで編まれた本である。
また、最新の医療現場の実情を反映させるために、出版時期に「5歳未満の子どもの親であることだけを条件に、病院や親の年齢、住む場所、家族構成などには一切こだわらずに、様々な障害をもつ子どもの親達19人の手記でもって構成されている。

具体的な内容は、ぜひ本書を手にとって読んでいただければと思う。
子どもが生まれるまで、生まれた瞬間、育てていく中での周囲の様子や自分の気持ちの変化など、本当にひとくくりにはできない体験が、不安も喜びも含めて、とても赤裸々に綴られている。
医療従事者はもちろんのこと、祖父母などの家族も含め、最初に親子を取り囲むことになる人々の態度や言葉が、時にはいかに「バリア」(壁)になり得るかという実情も…。
それでも、全ての手記を通して言えることがあるとすれば、親達がこの本の編者達を信頼し、この人達を通してなら言うに言えなかった思いを吐露してもいい、自分のこれまでの体験を世間に役立ててもらってもいいと思えた、ということなのだ。
本の編集者と、福祉従事者は当然ながら役割が違い、プライバシーにも触れる体験を洗いざらい語ってもらう、というような機会が日々の業務の中で訪れることはない。
しかし、この本に綴られているような親としての経験というものが、語るに尽くせない思いとともに、必ずひとりひとりの胸の内にしまわれているのだ、ということには気付いているべきなのではないか?
せめてそのことに気付いているということが、曲がりなりにも「生活支援員」という肩書を持つ人間にとって、ささやかだが大切な一歩なのに違いないと教えてくれた一冊であった。