館内清掃を担当するストローク会

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ピッカ、ピッカの6年生!清掃を通じて精神障碍者の就労支援に取り組む

鮮烈な出会いと転職

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あゆみの家を訪れた人たちが、施設を見て最初に口にするのは「中はとても広々としていて、きれいですね」ということです。たっぷり光が入る大きな窓に加え2年前に内装工事をしたこともありますが、清掃に従事している方が、一生懸命働いている賜物でもあります。

この施設の清掃を担当しているのは、ストローク会というNPO法人ですが、精神障害者の就労支援の分野では知る人ぞ知る草分け的な事業所です。創設者の金子鮎子さんは、元NHK職員で女性カメラマン第1号という方です。今でこそ女子アナは花形職種で女性のプロデューサーや脚本家も珍しくありませんが、金子さんの現役の頃の放送業界は典型的な男社会でした。

そんな時代に「仕事を通じて自立すること」への強い思いをもっていたことから在職中から精神障害者の生活や社会復帰について自由に語り合える日曜サロンを開催していました。このサロンで「私も働きたい」という当事者の切実な声を何度も聞いたことで、退職後に精神障害者の雇用に取り組むことを使命とする会社を起こしました。それがストローク会の前身で1年前に専門的支援を充実するためにNPOに移行して就労継続A型事業所の指定を受けました。

そういう事業者なのであゆみの家でも精神障害者の方がジョブコーチの支援を得て職業訓練に従事しています。

不思議な縁といえば、あゆみの家を運営する新宿区障害者福祉協会の元職員がストローク会にいます。「あじさいホームで5年間ほどヘルパーとして働いていました。あゆみの家に入ると、昔、一緒にホームで過ごした懐かしい顔を見ることができて嬉しいです」という広瀬看さん。入社6年目で20カ所程の契約先を東奔西走の毎日です。介護から清掃へ、重度身体障害者から精神障害者の支援へと転進を促したものは何だったのか?

「当時、あじさいホームの清掃をストロークにお願いしていましたが、社有車がなかったので私がホームの車で清掃道具の運搬を手伝いました。そこで営利を目指す株式会社なのに精神障害者の雇用を積極的に進めようとしている会社だという話を聞いて興味を持ちました。当時の私の考えだと精神障害者は、ちょっと怖いというか、普通に働くというイメージはありませんでした。新聞やテレビの報道でも突然刃物を振り回すとか、何の理由もなく人に危害を加えてしまう人みたいな取り上げ方が多かったせいもあります。実は、私の父親は精神科医で病院勤務をしていたので精神科の病棟に行ったこともありました。そこは閉鎖病棟もあって、普通の病院とは雰囲気も違うし、私も何か腫れ物に触るような人たちという偏見と先入観を持っていたと思います。だから「普通に働くことを支援する」というのがすごく新鮮で驚きました。
あじさいホームでも「重度障害者も働きたい」という願いを持っている人がいることは知っていたので、この会社で学べば、将来は、あじさいの人にも何か貢献できるかもしれないと思って転職を決めました。実際に一緒に働いてみたら、正直で誠実、とても優しくて繊細な人が多いのです。障害を持たない人の方がはるかに怖いことがよくわかりました。」

マッチィングでひと工夫

現在のストローク会は、精神障害者の職員は定員25名に対して19名で障害を持たない職員が6名いて、合計25名の職員が契約先の清掃をこなしています。男女比は、男性8割、女性2割で業界では珍しいそうです。清掃仕事は、トイレ清掃を伴う現場が多いので普通は中高年の女性パートを多く雇用しているからです。そういえば男子トイレに女性の清掃員の姿を見かけることはあっても逆は殆どないので思わず納得です。一方、精神障害を持つ女性で「清掃をやりたい」という人は稀なのでその違いが同業他社との差になっているようです。

障害を持つ職員の勤務日数は週に1、2日から3、4日まで個人差があり、時間も3、4時間からフルタイムに近い人まで個人差があるそうです。またグループでの分業ができる人もいれば、それが苦手な人もいるそうで、通勤距離や労働環境、業務内容、障害に応じて配慮すべきこと等、様々な要素を組み合わせて人と仕事のマッチングをしています。

「さらに少しずつ勤務時間を延ばしたり、業務の幅を広げていますが、条件のいい会社にステップアップする=転職する人はあまりいません。会社としては多くの方に訓練や雇用の場を提供できるので転職も応援しますが、過去にそれをめざして挫折して離職を繰り返し、病状悪化や再入院の失敗経験を持っている人も珍しくないからです。また、仕事を通じて本人の適性が見えて清掃とは別の仕事が向いているかもと再発見することがあります。年間を通じると波があるので清掃ではきつい時期もあります。そんな時に清掃以外の業務を持っていると働きやすくなるし、雇用機会も広がります。そこでここ数年、新たな商売のネタを探しているのですが、中々いいネタがなくて頭が痛いです。どんなヒントでもいいです。教えて下さい!」
と、ない物ねだりをする広瀬さんのメガネの向うには、とても優しい目が光っていました。