あゆみの家のこれからを考える第一歩

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あゆみの家は区の直営施設から社会福祉法人の運営に移行して今年で5年目です。今年は契約期間の最終年度になるので来年以後の第2期の契約に向けて、この5年間を振り返って実績や課題、次の5年間の運営についての提案を新宿区にしていきます。
そこで今回はちょっとお堅い話になりますが、今、あゆみの家で起こっていること(課題)とそれに対して現場の職員はどう考え行動しようとしているのか、「あゆみの家のこれからを考える第一歩」について報告します。
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今、あゆみの家で起こっていること

昨年度の利用者満足度調査の結果によると、「あゆみの家にずっと通わせたいと思うか」という質問に96%の方が「すごくそう思う」か「ややそう思う」という意見でした。法人も使命として「重度、重症の障害者であっても住み慣れた地域でその人らしい地域生活、自立生活を支援すること」を掲げているので、この結果はとてもうれしいです。
しかし、一方では高齢化による二次障害や重度化が進み、医療型と呼ばれる「療育センター」でないと対応が難しいと思われる方もいます。(「療育センター」とは、医師が常駐して「医療やリハビリ」の支援体制が整っている施設のことで、新宿区内にはなく、ほとんどは都立施設です。)
元々あゆみの家の運営を受託するにあたっては「利用者の高齢化や重度化への対応」は避けて通れない問題でいずれしっかり取り組まなければと考えていましたが、この問題は将来の課題ではなく、現在進行形の問題なんだと考えさせられる事態が相次いで生じています。
まず、今、あゆみの家で起こっていることは何か…。

  • A利用者:進行性の障害を持つ方で最近は通所バス内のむせがひどくなり、バス利用に不安が増している。通所バスはやめて自主通所に変更すべきだろうか。
  • B利用者:痰の吸引について主治医の指示書どおりの方法では安全で十分な対応ができないという不安がある。
  • C利用者:最近、胃瘻を増設。グループには既に医療的ケアの頻度が高い利用者がいるので、今後、通所日数を減らされてしまうのではないかという不安がある。
  • D利用者:今までは酸素投与のみだったが、24時間人工呼吸器使用となった。今後の利用には通所日数の減少や保護者によるケアの提供や所内待機が通所条件になった。
  • E利用者:入所申請が出ている方で、現在は感染症は発症していないが感染症の保菌状態にある。

感染症への抵抗力がとても弱い利用者のいるあゆみの家でどこまで受け入れ可能なのか、何人か専門家(医師)に相談すると、入所の是非や入所後の対応方法について見解が異なりました。
こうした事態に直面した利用者は、「あゆみの家か、在宅か、療育センターへ移籍か」という選択を迫られることになります。仮にあゆみの家の利用継続が可能になった場合でも、設備や職員体制を理由に通所日数の減少や保護者の付添や待機、プログラムの参加制限をお願いしなければならない事態も予想されます。こんな事態を想定した利用制限のルールや基準は、まだ用意されていません。
あゆみの継続利用は諦めて療育センターへの移籍による通所を希望するとどうなるか。東京都は、療育センターを新設しない方針で既存の療育センターに中途入所の問い合わせをしても「情報開示はしていません」とか「当分の間、受入予定はありません」という返事が返ってくるだけで移籍は簡単ではありません。

結局、「あゆみの家か、在宅か」という選択になります。そうなると在宅の生活に希望を持てないと考える保護者は、医療的ケアにつながる治療や登録をギリギリまで先送りする苦渋の選択をすることになります。

あゆみの家にできること、できないこと

「あゆみの家にずっと通わせたい」という皆さんの願いに応えること。また、「あゆみの家は、重度・重症者にその人らしい日中生活と社会参加の場を提供する、最後の砦として期待に応えてきた」という歴史を踏まえ、今、あゆみの家にできること、できないことは何なのか。そこでこんなことを考えてみました。
障害の重度化に直面してもあゆみの家で受け入れや利用継続ができるようにするために、あゆみの家が「療育センター」と「生活介護」の中間施設として役割を担うことはできないのだろうか?

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「できるか、できないかでなく、どうしたらできるかという姿勢で受け止めていこう!今からできること、すべきことを考えよう!」という職員がいます。「自分たちのレベルではとてもできない。今でもギリギリでやっているのにこれ以上の無理を強いるべきではない!」という職員もいて議論は平行線です。
ここでは前者の立場で、これからあゆみの家でできること、すべきことは何かを考えてみます。そこでふたつ。

  1. 医療事故や所内感染リスクへの対応策の徹底
  2. 福祉(介護)と医療の連携・協働体制作り

そのため具体的にどんな取り組みをするのかといえば、

  1. 生活支援員向けに医療の知識の習得と医療的ケアの補助業務ができる研修を実施する。
  2. 生活支援員に対して利用者の状態変化に適切に対応できる観察力を養成する研修や現場指導に取り組む。
  3. 感染症の理解促進と標準予防策を徹底する取り組み。

これらの取り組みを進めて、実のあるものにするためには新宿区と父母会の協力や支援も必要です。例えば…、

  • 区の支援:ひと、もの、お金の支援⇒職員配置の充足、設備の拡充、そのための予算措置。
  • 保護者の支援:時間確保のための協力⇒職員の研修、ケース会議、支援記録や報告書作成等に使える時間の確保。年に何日か、半日通所日を設けて時間を捻出する。

※何故なら…区直営時代には夏休みと春休みで年間10日ありましたが、現在はゼロです。また、法人運営になって利用者支援時間を毎日30分延長していますが年間換算すると15日分です。これで利用者サービスの向上につながった反面、職員は、年間で25日分、研修や会議、事務仕事の時間が削減される環境で働くことになりました。

中間施設のメリットとデメリット

施設の方向性として「中間施設化」を考えてみましたが、良いこと尽くめではありません。
●期待されるメリットは…

  • 健康管理が強化されて、より安心・安全な施設になる。
  • 医療やリハビリに対する介護職員の観察力や支援力(スキル)が上がる。
  • 医療事故や所内感染のリスクが少なくなり、看護師が安心して働ける。

●心配されるデメリットは…

  • 通所日数、滞在時間の短縮や自主登所等の利用制限が生じる利用者が出てしまう。
  • 施設が負うリスクに応じて保護者によるケアの提供や付添を求めることがある。
  • 個室対応、行事(遠距離の外出、夜間の外食等)への参加不可や制限をお願いする利用者が出てしまう。

この課題について考える場合に忘れてはいけない大切なことがあります。それは何か…。

障害者の通所 施設の利用は、かつては措置制度の下に行われましたが、現在は契約制度の下で行われていて、この間に事業者と利用者の関係が大きく変わった点です。

◆措置制度:行政の裁量で利用許可や処遇の変更(サービス内容や方法の変更)が行われていました。

◆契約制度:事業者と利用者は、契約関係にあり利用者の選択や自己決定の尊重と契約者双方の合意のもとに処遇の変更も行われる仕組みになりました。変更する場合には事業者には十分な説明責任が求められます。

さらに近年は、権利擁護や「障害者差別解消法」により、事業者側には合理的配慮が求められています。障害者サービスの提供にあたり、正当な理由がない場合に差別的処遇につながる可能性がある例として国の指針では次の対応に注意を喚起しています。

  • サービス提供時間の変更や制限
  • 別室、個室での処遇等の場所の限定・保護者の同伴や待機を利用条件にすること
  • 本人、保護者の意思に反してサービスを行うこと

「正当な理由」とは、第三者の立場から見ても納得が得られるような「客観性」が必要ということです。

6月から所内で「あゆみの家あり方検討会」を発足させて月2回ペースで様々なテーマで調査や検討を進めます。

新宿区から情報提供

「あゆみだより」の中で、療育センターのご利用について触れている記事がありましたので、新宿区の取り組みについてご報告させていただきます。

1.重症心身障害児(者)通所事業所のご利用方法について

東京都が利用調整している都立施設等は、年に1度区を通じて利用申し込みが可能です。サービス事業名は「生活介護」となります。毎年10月上旬に区より施設ごとの申込者一覧を東京都に提出し、11月中旬に利用が決まることになっています。

2.重症心身障害者(18歳以上)の都内施設入所(療養介護)のご利用方法について

東京都が利用調整している施設は、空きが発生するごとに都から区に募集がかかります。サービス事業名は「療養介護」となります。区は、入所希望者の全名簿を毎年都に提出しています。その上で、空き床の発生ごとにとの連絡を受けて、区が名簿の中から入所希望者を推薦し、東京都の選考会議で決定します。

《 お問い合わせ先 》

通所・入所とも、ご利用のご相談は障害者福祉課支援係にて通年で行っています。
担当:障害者福祉課支援係 03-5273-4583