第7回落合つながるカフェ 福祉避難所は、どうなっているのか?

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阪神淡路、東日本、熊本、3つの大震災の経験を経て福祉避難所はどこまで進化したのか?

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そんな疑問から保護者と職員に“福祉避難所”についてアンケート調査をしました。その結果をもとに6月24日に第7回『落合つながるカフェ』を開催しました。

全国的に見ると新聞報道では全国の区市町村体で45%の自治体が様々な福祉施設を福祉避難所に指定しています。熊本市でも協定の締結はかなり進んでいたということですが、実際の被災時にどの程度の避難所がその役割を果たすことができたのかを見ると…

避難者の受け入れ人数

福祉避難所の開設
市の想定数:176ヶ所 実際の開設数:73ヶ所
市の想定:1700人 実際の受け入れ:366人

熊本市は想定を大きく下回った原因を「想定以上の大災害で、施設自体が損壊したり、職員も被災して出勤できなかったため」と説明していました。

あゆみの家の職員は、福祉避難所をどのように考えているのか。大震災時に職員の初動はどうなのか、調査で聞きました。『カフェ』では、初めに被災時の職員の駆けつけについて最も多かった回答を予想してもらいました。職員の年齢構成は20~30歳代が4割、40歳代が4割です。

  1. 同居家族もいないのですぐに駆けつけて避難所立ち上げに従事できる。
  2. 同居家族の安否確認や避難場所が決まり次第駆けつけて従事できる。
  3. 要支援(育児や介護)の家族がいるので1日、2日は従事できないと思う。
  4. 区外在住なのですぐに駆けつけることができないので公共交通が復旧したら従事できると思う。
  5. どうするかわからない。特に考えていない。

直ぐに駆けつけるという回答は4名、他はほぼ同数で2が11名、3が10名、4は11名でした。
職員が勤務時間中の被災なら早い時期に対応が可能ですが、休日や勤務時間外の場合には、何人集まることができてどの程度のことができるのか、その時になってみないと分からないというのが実情です。
ところで新宿区には福祉避難所でないと対応が難しいと思われる障害者は何人くらいいるでしょうか。身体障害や知的障害で重度・重症と言われる1級や1度の人は…

身体障害1級 知的障害1度 合計
3651名 69名 3720人

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これらの障害者は日常的に介護が必要なので主な介護者の母親や配偶者と一緒に避難するとなり、全員を保護すると約7000人になります。現在、区内で障害者向けの福祉避難所は5ヶ所で収容数は350~400人と想定されているので、甚大な被害があった場合には、受け入れ態勢を整備できても保護できるのは、全体の1割程度です。

職員も被災して避難所運営に必要な人数を確保できない場合は、どうしたらいいのか?

『カフェ』では、あゆみの職員がどう考えているのか最も多かった回答を予想してもらいました。

  1. 避難してきた利用者の親、兄弟等家族の協力を得る。
  2. 地域の町会役員、民生委員など地域福祉関係者の協力を得る。
  3. 区の災害ボランティアセンターの協力を得る。
  4. 地域の福祉施設の相互協力で対処する。
  5. どうしたらいいのかわからない。考えたことがない。

回答者の約7割が、1の親、兄弟の協力と回答しました。次に多かったのは、約5割の地域の町会役員や民生委員という回答でした。

大災害が発生すると施設は本来の機能を停止して福祉避難所として使用され、要援護者の支援を行うことになります。あゆみの家の場合、支援する要援護者は重度の身体障害者及び知的障害者になりますが、それは現在の施設利用者に限定されません。
そこで、『カフェ』では、近隣に住むあゆみの家の利用者以外の方が避難してきたら、どんな対応になるかという質問について、最も多かった回答も予想してもらいました。

  1. 収容人数や備蓄に制約があるので、障害者福祉サービスを利用している障害者に限るべきだ。
  2. 他では避難生活が困難で、特別なニーズのある方については可能な限り受け入れをすべきだ。
  3. 初めから線引きをするのでなく他の福祉避難所との連携関係を構築して柔軟に対応すべき。
  4. あゆみの家の利用者も他の施設でお世話になるからお互い様《共助》の考え方で可能な限り受入すべき。
  5. どうしたらいいのかわからない。

約6割の職員が3の「始めから線引きするのでなく…柔軟に対応」、次は、4の「お互い様で…可能な限り受入」 という回答でした。この前向きな対応を可能にするのは避難所のマンパワー、職員のチームワークと保護者や地域の人達との信頼関係、協力関係ですが、いずれも即席でできることではなく日頃の取り組みや関係づくりが大切です。

保護者は、避難所をどう考えているか?被災したら真っ先に避難所に駆け込みますか?

現在、あゆみの家に通所している利用者は40名ですが、徒歩30分圏内に在住している人は5名です。被災により自宅での生活が難しくなったらどうするつもりなのか?保護者アンケートで聞きました。そこで『カフェ』でどんな回答が多かった予想してもらいました。

  1. どんなに不安、不便でも自宅で何とかがんばる。
  2. とても不安、不便なので近くの一次避難所(小学校や中学校)に避難する。
  3. 最寄りの福祉避難所に避難する。
  4. どうするかわからない。特に考えていない。

約半数の保護者が、1の「自宅でがんばる」と回答しました。2番目は約3割で2の「一次避難所」でした。「最寄りの福祉避難所」と答えたのはわずか3名で避難先はあゆみの家でした。なぜ、こんな結果になったのか?

例えば、「最寄りの福祉避難所がどこか知っていますか?」と聞いたところ「知っている」という回答者は半数でした。半数は知らないわけですから逃げるとしても一次避難所になります。さらに障害程度が重度になるほど特別な配慮の度合いが高くなり、一次避難所にそれを期待することはできないとか、福祉避難所であってもどこでもいいわけではない、といった事情があって「一次」であれ「福祉」であれ避難所への避難を初めからあきらめている保護者がとても多いです。集合住宅に住む場合は「エレベーターが止まったら自宅にいるしかない」という方もいます。災害時の要援護者名簿への登録者が障害者の場合、2割台で低迷しているのも同じ事情です。

職員向け調査では「福祉避難所の運営で不安な点」についても聞いているので『カフェ』の最後にその点を取り上げました。調査では予想される困難や不安について10項目を例示しましたが、うち4項目で9割の職員が、そこが 不安と回答しました。それは…

  1. 施設の職員以外の支援者が見つからずマンパワー不足に陥ってしまうこと。
  2. 体調不良や感染症対策、救急医療との連携等、避難者の健康管理が十分にできるか不安。
  3. 給排水設備の不良による洗髪、清拭、食器洗浄、トイレの汚物処理など衛生面での不安。
  4. 停電で人工呼吸器や吸痰器等、医療機器の電源確保が困難になってしまうこと。

当日は『カフェ』の終了時間の頃に緊急館内放送が流れました。「訓練放送です。ただ今から地震を想定した避難訓練を開始します…」ということで、カフェ参加者も災害ボランティアになってこの訓練に参加しましたが、そこでも様々な発見や気づきがありました。

例えば、災害時の備品で重度障害者に使えない物がある。(組立式の仮設トイレは重度障害者には使えない。避難用担架は安全操作に不安あり等)。また、分散して保管している備蓄機材や備品の、保管場所や数量、使用方法を熟知している職員が1、2名しかいない。機器のメンテナンス、を行っていない、複数の職員が操作できる状態になっていない。一次避難所との連絡や連携方法(避難者の選考や移送方法)について何も決まっていない…等々。

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