ICT担当の取り組み

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はじめに

2020年4月より、施設の改修工事も終え、グループも一つ増え、気持ちも新たに「5グループ制」となった新生あゆみの家が始動開始しました。そして、昨年度から「生活支援」以外の職員の役割に、「ICT(※1)担当」という新たなものが加わりました。近年、特別支援学校でもiPad(※2)が1人1台支給されたり、ノートパソコンと視線入力装置を使った授業が行われる時代になっており、卒業後に過ごすあゆみの家でもICT支援の継続性を保つ為に出来た役割担当です。

立ちはだかる壁・壁・壁…

前年度から職員がIT研修に出向いたり、各グループの利用者から数名モニターを募って取り組んだりと準備は進めてきたものの、ちょっとしたことが困惑の種となり、「言うは易し行うは難し」を痛感する毎日でした。

例えば、筋緊張や不随意運動で常に身体が揺れる上に、眼振や斜視などがある利用者にどうやって視線入力装置をマッチングしていけばいいのか?数ある機材やアプリのどれを選ぶのが利用者のためなのか?そもそもパソコンの画面に「興味」をもってもらうにはどうしたら??などなど、次から次に壁が立ちはだかりました。最も高かった壁は、日中支援が終わってからの限られた時間内でアプリの使い方を勉強したり機材や補助具の研究をするにも、なかなか思うように事が進まなかったことです。

突然のコロナ禍で…

ところが、コロナ禍の為に様々な行事やイベントが軒並み中止になったために、「ICTにかける時間」と「ICTの必要性」が同時に転がり込んで来ました。ある意味「有り余る日常生活」の中で、職員の余裕も考える時間も増え、外出も集合行事も出来ないためICT機器を使用した日中の個別支援活動が増え、密を避けるための「オンライン」のニーズが増え、日々現場レベルで具体的な実践が積み重なり、ICTがあっという間に日常化、習慣化していくこととなりました!

iPadと視線入力で楽しめる!

現在、具体的に取り組んでいるICT活動をご紹介します。まずiPadを用いた個別支援の取り組みです。好きなYouTubeでの動画鑑賞を自分自身で操作して楽しんだり、「ドロップトーク」という絵カードアプリを使って活動内容の選択を行う利用者もいます。ある利用者は「漢字学習アプリ」で着々と読める漢字を増やしています。ゲーム感覚で覚えられるのでとても楽しいようです。iPadのゲームアプリはシンプルに楽しめるものも多く、パンケーキをフライパンで焼いて重ねたりする「お料理ゲーム」にハマって、一生懸命手を動かしている利用者もいます。現在あゆみには2台のiPadがありますが、近々3台追加されて各グループに1台ずつ行き渡る予定なので、さらに活用の幅と自由度が広がるでしょう。

次に、「視線入力装置」のご紹介です。パソコンを操作する為には、通常「マウス」を手で動かす必要がありますが、トビー社の「Tobii Eyetracker 4C」という細長い装置をモニターの下部に取りつけると、画面を見つめる人物の「目」を検知し、視線を動かすだけでパソコンを操作することができます。あゆみの家では「EyeMot」という重度障害者の為に作られた無料の視線入力ソフト(※3)を使っています。「風船割り」や「塗り絵」ゲームを楽しむ人や、視線を画面上で自由に走らせると、音や光が視線に伴って縦横無尽に現れるゲームに夢中になっている人もいます。今後は、重度の肢体不自由の利用者の意思表示に役立てるように、視線入力のフィッティングをさらに追求していく予定です。「東京都障害者IT地域センター(※4)」のHPを見ていただくとICTを利用した利用者支援の様々な実例が参照できます。

zoomとマチコミ…支援以外にも広がるICT

また、「利用者支援」以外でもコロナ禍を乗り切るべく、二つの点でICT化を進めました。まず一つ目は、zoom (※5)を使ったオンラインミーティングです。多くの企業でテレワークが進み、テレビをつけてもzoom画面を目にしない日はないといった有様ですが、あゆみの家でも「多目的ルーム」と「会議室」という2部屋を繋いだzoomによる職員研修を7月に行いました。

二つ目は、保護者と施設を繋ぐメーリングリスト「マチコミ(※6)」を8月から導入したことです。関東地方でもいくつかの福祉施設で陽性者が出て、数日間施設が閉鎖される事態が起こっています。施設の突発的な休所など万が一の緊急時の際にも、今までなら地道に保護者の電話連絡網に頼るしかありませんでしたが、マチコミを導入することで施設からの一斉連絡が可能となり、大事な情報を瞬時に、正確にメールやアプリで確認していただけるようになりました。

おわりに

利用者さんに一段階新しい生活を提供する仲立ちをすべく、様々な壁(?)を乗り越え、ICT担当は今後も様々な企画(妄想?)に取り組んでいきます。皆さまからも何か新しい情報や便利なアイディア等あれば、是非ICT担当までご一報ください。


(※1)「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略。通信技術を活用したコミュニケーションのこと。

(※2)アップル社から販売されているタブレット型コンピューター 

(※3)島根大学 伊藤文人先生が主催する「ポランの広場」に詳しい情報あり。

(※4)障害当事者や支援者の為のIT相談や研修を行う東京都福祉保健局の管轄事業。茗荷谷の社会福祉保健医療研修センター1階 にショールームがある。

(※5)パソコンやスマートフォンを使って、セミナーやミーティングをオンラインで開催するために開発されたアプリ。

(※6)主に学校などの教育機関向けに、従来の電話やアナログな方法による連絡の不便さを解消する為にスタートしたメール連絡網サービス。